バレット食道 BARRETT ESOPHAGUS
バレット食道について
バレット食道とは、食道の粘膜を覆う「扁平上皮」が、胃酸や胆汁などの刺激によって慢性的に傷つき、「円柱上皮」へと変化した状態を指します。
この変化した粘膜の長さによって分類され、3cm以上の場合は「LSBE(Long Segment Barrett's Esophagus)」、3cmに達しない場合は「SSBE(Short Segment Barrett's Esophagus)」となります。
バレット食道の長さが長くなるほど、「バレット腺がん(食道腺がん)」の発症リスクが高まるとされています。日本人ではSSBEが大多数を占めており、がんに進行するリスクは比較的低いとされています。 なお、食道がんのうちバレット腺がんが占める割合は約7%とされており、今後も注意が必要な疾患の1つです。
バレット食道の症状
- 胃もたれ
- 嘔吐
- 胸焼け
- 腹部膨満感
- 食道の違和感(食道に異物感や詰まり感がある)
- 嚥下障害
- 嗄声
- 声のかすれ
- 胸痛
など
バレット食道の原因
バレット食道は、主に逆流性食道炎をきっかけに発症します。 胃酸が食道へ逆流することで粘膜に繰り返しダメージが加わり、修復過程で本来の扁平上皮が、胃の入り口付近に存在する円柱上皮へと置き換わっていきます。
近年では、食生活の欧米化や生活習慣の変化に伴い、日本でも逆流性食道炎の患者数が増加傾向にあり、それに伴ってバレット食道の発症も増えるといわれています。
バレット食道の検査
逆流性食道炎の症状がある場合、バレット食道が発生している恐れがあります。 バリウム検査ではバレット食道の確定診断はできないため、正確な診断には胃カメラ検査が必要です。胃カメラ検査では、食道と胃の接合部付近の粘膜を詳細に観察し、色調や構造の違いから扁平上皮と円柱上皮を判別して、バレット食道かどうかを確認します。 また、必要に応じて組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べることで、細胞の形の異常や増殖の程度などを評価することができます。
バレット食道の治療
現在のところ、バレット食道を元の正常な状態に戻す明確な治療法は確立されていません。そのため、治療の主な目的は、逆流に伴う症状を抑え、進行を防ぐことにあります。
逆流性食道炎を放置すると、バレット食道が悪化する可能性があるため、逆流による症状のある方は適切な治療を受けながら、年1回は胃カメラ検査を行い、粘膜の変化を継続的にチェックすることが大切です。
バレット食道とバレット食道がんについて
バレット食道の方の中には、病状が進行し、バレット食道がんを発症する場合があります。がんへの進展には個人差がありますが、発症後に病状が急速に悪化して重篤な事態を引き起こす場合もあります。
バレット食道がんを未然に防ぐには、バレット食道を早い段階で見つけ、適切に対応していくことが重要です。予防と早期発見のためには、定期的な胃カメラ検査を受け、バレット食道を引き起こす逆流性食道炎などを早期に発見・治療しておくことが大切です。
バレット食道の
よくあるご質問
バレット食道と診断された場合、食事で気をつけることはありますか?
バレット食道は、胃酸の逆流によって食道粘膜に炎症が生じ、その結果として発症します。
そのため、胃酸の逆流を抑えるための食事内容や食習慣の見直しが重要です。 具体的には、香辛料などの刺激物や脂っこい料理は控えめにし、腹八分目を心がけましょう。
また、よく噛んでゆっくり食べることも大切です。さらに、食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすくなるため、しばらく体を起こして過ごすようにしましょう。
バレット食道の診断を受けましたが、食道がんになる可能性はありますか?
日本人に見られるバレット食道は、バレット粘膜の長さが3cm未満の「SSBE」とよばれるタイプが多く、この場合は食道がんに進行するリスクは比較的低いとされています。 一方、バレット粘膜の長さが3cm以上の「LSBE」と診断された場合は、年間の食道がんの発症リスクがおよそ1.2%とされており、SSBEに比べるとやや高くなります。
.SSBEと診断されましたが、治療は必要ですか?
現時点では、バレット食道そのものを元に戻す明確な治療法は確立されていません。
しかし、逆流性食道炎を放置してしまうと、症状が進行する可能性があるため、逆流の症状がある場合は治療が推奨されます。その際、食生活や生活習慣の改善も欠かせません。